こんにちは、ヒッチです。
今回は小説です。
かなり昔の小説、というか“吸血鬼小説の祖”とまで言われているジョン・ウィリアム・ポリドリの『吸血鬼』の最新翻訳版『吸血鬼ラスヴァン』を読みました。
※以前か〜なり昔の翻訳版の『吸血鬼』の感想?を書いていますので、そちらにもリンク貼っておきますね〜♪
まずは本の紹介から。
吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集
吸血鬼ダーヴェル――断章(1819) ジョージ・ゴードン・バイロン
吸血鬼ラスヴァン――奇譚(1819) ジョン・ウィリアム・ポリドリ
黒い吸血鬼――サント・ドミンゴの伝説(1819) ユライア・デリック・ダーシー
吸血鬼ヴァーニー――あるいは血の晩餐(抄訳)(1847) ジェイムズ・マルコム・ライマー トマス・プレスケット・プレスト
ガードナル最後の領主(1867) ウィリアム・ギルバート
カバネル夫人の末路(1873) イライザ・リン・リントン
食人樹(1881) フィル・ロビンソン
カンパーニャの怪(1886) アン・クロフォード
善良なるデュケイン老嬢(1896) メアリ・エリザベス・ブラッドン
魔王の館(1907) ジョージ・シルヴェスター・ヴィエレック
夏来健次/平戸懐古 編訳 東京創元社 2022年5月31日
概要
『吸血鬼ドラキュラ』以前のだいたい1800〜1900年代に書かれた英米の吸血鬼作品を集めたアンソロジー本、という事です。
この本のありがたいところは、この本のタイトルにもなっている『吸血鬼ラスヴァン』はもちろん、その作者のポリドリが『吸血鬼ラスヴァン』を書く上で影響を受けまくった作品、バイロン卿の『吸血鬼ダーヴェル』が並んで収録されている点、
『吸血鬼ドラキュラ』や他の吸血鬼物にもかなり影響を与えた(らしい)と言われているのに、日本では翻訳されて本になった事がたぶんないめちゃくちゃ大作の『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳(1部分を翻訳した事をこう言うんだそうです♪)が収録されている点、
各小説の始まりの前に作者の紹介文がある点、
後書き……というか最後に載っている解説が非常に読み応えのある点、
などですかねえ♪♪
たぶんもっと吸血鬼事情に詳しい方でしたら、
こんな作品も! あんな作品も!
と、いうような作品群らしいです。そんな本が今年2022年の5月に発売になっていたんですねえ。
しかしお値段3300円!と、かなり高額!
これは完全にコレクターズアイテムってヤツですよ。
私、お金ないからなかなか手が出せませんでしたわっっ。
Amazon Kindleだと2880円だったりします。
そんな中AmazonKindleでも販売がされておりまして、それだと2880円!
いや高いってっっ!
※ちなみに他の電子書籍でも3200円だったり、ちょっと安いだけでそれなりのお値段します。
つー事で販売元の東京創元社のサイトのページにもリンクはっておきますね〜♪
と思いつつ、とりあえずサンプルをダウンロードしてみました。
とりあえずどこまで読めるんかなあ〜?と、読み始めますと、
まさかのバイロン卿の『吸血鬼ダーヴェル』はそれで完全に読めてしまいました!
マジか!
そして『吸血鬼ラスヴァン』もどんどん読める!
もうどんどんどんどん読める!
どんどんどんどん読めて、もう後ちょっとで話が終わる!!
と、思ったところでサンプル終了〜!
も〜!ウソだろ〜!後数ページで読破出来るじゃんか〜!信じられん〜っっ!
と、いう事で、サンプルだけ読むとめっちゃ悔しい思いをする事になりますので、ご注意くださいませ♪♪
そんな訳で悔しくなった私、本を買ってしまいましたわ(笑)。
そんな訳でここからは『吸血鬼ダーヴェル』『吸血鬼ラスヴァン』の感想です。
吸血鬼ダーヴェル(1819)
ジョージ・ゴードン・バイロン作
作品の前にバイロンの簡単な紹介を。
1788年にイングランド生まれ。10歳の時に従祖父の第5代バイロン男爵が亡くなって、相続人がいなかった事から第6代バイロン男爵になっちゃったそう。1807年に詩集を発表し、その後も地中海などヨーロッパを転々としながら詩集や小説などを発表。私生活もいろんな女性とも関係を持っていたりハデだった様です。しかし36歳の時ギリシャ独立戦争参加するも、熱病にかかり亡くなったそうです。しかし残した作品の数はかなり多いそうな。
で、この『吸血鬼ダーヴェル』ですが、バイロン卿と駆け落ちしていたメアリー・ゴドウィンとパーシー・ビッシュ・シェリー、バイロン卿の専属医だったポリドリ、バイロン卿の愛人だったクレア・クレモントの5人でディオダティ荘に滞在した際に行われた「それぞれ怪談を書こう」というバイロン卿の一言から生まれた作品で、この一夜の事を“ディオダティ荘の怪奇談義”と言うそうです。
※この時にメアリーは『フランケンシュタイン』の原案を考えて後に発表しました。
しかしバイロン卿はこの『吸血鬼ダーヴェル』を完結させず、放り出してしまったそうで、それを読んだポリドリが痛く影響を受けて『吸血鬼』を完成させます。
なのでこの『吸血鬼ダーヴェル』。ビックリするくらい未完です。
読んだ感想としては、
ここから先が、超気になるんですけど〜〜〜〜〜〜〜!!!!
です。
バイロン卿の作風とか、全く知らないんですけど、
というかこの翻訳がとても良いんだと思うんですが、
とても分かりやすく面白いのです!
な、だけに未完って!
もうここから先が読みたいって所で終わってるのが、まあ勿体ない!!
何故書かなかった?と、読み終わった後思う事必至です。
なのでポリドリが影響を受けたのもとてもうなずける話なのです。
とても短い作品なので、古典を知りたい方には超おすすめです♪
吸血鬼ラスヴァン (1819)
ジョン・ウィリアム・ポリドリ作
先に紹介した『吸血鬼ダーヴェル』に触発されて書かれた作品で、1819年に『ニュー・マンスリー・マガジン』 (New Monthly Magazine) 誌にバイロン作として発表されて、バイロン、ポイドリ共に訂正を訴えたんですが、ずいぶん長い期間、訂正される事なく誤解されたままの状態だったそうです。
で、作者のポリドリは25歳の若さで鬱病やギャンブルなどによる借金が原因で自殺してしまっています。なので生前は認められていなかったかも知れませんね。
そんなポリドリの『吸血鬼』ですが、現在手に入りやすい翻訳の本はこの本以外にもこんなのあります。
幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)
「アウトサイダー」 H・P・ラヴクラフト
「幽霊島」 A・ブラックウッド
「吸血鬼」 ジョン・ポリドリ
「塔のなかの部屋」 E・F・ベンソン
「サラの墓」 F・G・ローリング
「血こそ命なれば」 F・M・クロフォード
「サラー・ベネットの憑きもの」 W・F・ハーヴェイ
「ライデンの一室」 リチャード・バーラム
「“若者よ、笛吹かばわれ行かん”」 M・R・ジェイムズ
「のど斬り農場」 J・D・ベリスフォード
「死骨の咲顔」 F・M・クロフォード
「鎮魂曲」 シンシア・アスキス
「カンタヴィルの幽霊」 オスカー・ワイルド
『吸血鬼ドラキュラ』の翻訳でも有名な平井呈一が翻訳した西洋怪奇小説を集めたアンソロジー本。なんかこれはこれで買って読んでみたいんですけど♪♪
ただ、平井呈一も76年には亡くなっている方というくらい前の方なので、翻訳が今回発売された本の訳と比べると、古く感じるかもしれません。読んでいないので分かんないんですけど♪♪
という事でこちらの本も販売元の東京創元社のサイトのページにリンクはっておきますね〜♪
で、個人的な感想です。
の前にちょっと物申したいんですけど(笑)。
この『吸血鬼ラスヴァン』というタイトル。元々100年くらい『吸血鬼』というタイトルで発表されて、吸血鬼の名前も“ラスヴァン”ではなくずっと“ルスヴン”だったじゃん!!
ぶっちゃけ最初、別の小説があったっけ? って悩んでしまいましたわ!!
まあ、いいんですけど♪♪
んでもって感想です。
読みやすい!!
やっぱり新訳は時代にあっているので、それだけでもだいぶありがたいです!!
何せ以前読んだ『ドラキュラ ドラキュラ』という本の訳が、
一行目から何が書いてあるか分からないような昔の文章でしたので(笑)、
これだけでありがたいのです♪♪
そしてポリドリが『吸血鬼ダーヴェル』にめっちゃ影響を受けていたのが分かります。
というか、バイロン卿が途中で小説をほっぽり出しちゃったから、
ポリドリなりに続きを書きたくなっちゃったんじゃなかろうか?
と、想像してしまうくらい、根っこは同じ気がします。
しかしポリドリの『ラスヴァン』は当然オリジナリティに富んだ内容になっていますし、
ラストの展開も、
「相変わらず酷いわあ〜」
と、思ってしまいました。
でも素直に面白かったです♪♪
昔の小説ですので、吸血鬼の生態が今と違うし、正直よく分からない点もあるんですけど、
物語の求心力って言うんですかね? グイグイ先が読みたくなっていくのですよ♪♪
まあ訳者さんの力もだいぶあると思うんですけど♪♪
で、この本での『吸血鬼ラスヴァン』、「序章」というのが付いていました。
どうやら元々付いていた物らしいのですが、翻訳されているのはこの本ともう1冊だけなんだそうで、それも何気に貴重かもです。
そしてその序章の内容で当時の吸血鬼の解釈や立ち位置がちょっと理解できますので、とてもおすすめです♪♪
そんな訳でこの本にはまだ読みたい作品がどっさり収録されていますので、
また感想が書きたくなったら書きますね〜♪♪
という事で今回は『吸血鬼ラスヴァン』収録の『吸血鬼ダーヴェル』と『吸血鬼ラスヴァン』の感想でございました。
んじゃまた〜♪♪