吸血鬼 吾作
朝から寝ていたおサエは昼過ぎに起きた。そして今朝あった事を思い出し、ゾッとした。吾作は化け物になってしまったのだろうか?でも昨日は自分が恐くなって布団に入ったから、心は吾作のままなはずだけど…。でもまた血が欲しくなった時、この人はどうするんだろう?と、寝ている吾作を見た。吾作はよっぽど恐かったのか、布団を頭までかぶって寝ていた。おサエはその布団をはがして顔を見る勇気はなかった。吾作は吾作だ。あんな優しい人が化け物になってるはずがない。きっと昨日の出来事は夢か何かだ。と、おサエは自分に言い聞かせ、畑仕事に出かけた。
「吾作〜。体調どうだん〜?」
と、近所の村人が吾作の家にやってきた。おサエは畑に出かけて留守だったので、
「あれ?畑かん?吾作は中におらんかん?」
と、家の中に入ってきた。部屋の奥で吾作は頭から布団をかぶって寝ていたので、
「あ、吾作〜。寝とる?」
と、村人は声をかけた。しかし全く動く気配がない。
「吾作〜?」
と、もう一回声をかけたが、ピクリとも動かない。あれ?そんなに熟睡してるのか?それともなんか問題が起きてないか?と、疑心暗鬼になった村人は、部屋に上がって、
「吾作?」
と、また声をかけた。それでも吾作はピクリとも動かない。ますます心配になった村人は吾作の布団とところまでやってきて、
「吾作?吾作!」
と、少し大きな声で話しかけた。しかし吾作は動かない。もうヤバいと思った村人は、
「吾作!」
と、布団をめくった。するとそこには、青白く痩せ細り頰のこけ目は落ちくぼみ、口から尖がった歯を二本生やした吾作が仰向けに寝ていた。しかし恐ろしかったのは落ちくぼんでいる目がランランと開いていて、天井を仰いでいる事だった。
村人はその顔の恐ろしさに、
「ひゃあ!」
と、後ろに飛びのいた。しかし吾作はピクリとも動かない。
「吾作?吾作?」
と、もう一度声をかけるが動かない。村人は恐ろしさのあまり、家から飛び出して、
「ご、吾作があ〜!」
と、大声でわめきながらおサエの元へ向かった。