吸血鬼 吾作
日はどっぷりとふけて真っ暗な夜になった。この日もお月様はきれいで星もよく見える。だいぶおサエが落ち着いてから吾作はさっきあった一部始終を聞いた。それを聞いて吾作は落ち込み、
「わし…やっぱり化け物だから、みんなもうわしらの相手をしてくれんかもしれんなあ。」
と、言った。
「吾作は化け物なんかじゃあーへん!化け物だったら私はもうとっくに殺されとる!」
と、おサエはちょっと強めに言った。その言葉は吾作とてもありがたかったが、この先の事を考えるとあまり喜べなかった。
吾作は昨晩、自分に起こった事を話した。自分が獣になった事、夜がとてもきれいに見えるようになった事、なんなくウサギを捕まえて血を吸ってしまった事、その話を全部おサエは真剣に聞いていた。そして、とても信じられないと思った。しかし実際に目の前にいる吾作の顔を見ると本当の事なんだろうと、自分に言い聞かせた。
しかしそれからどうなるのだろう?村人たちは自分たちをこれから避けてしまうかもしれない。いっそ二人でどこ山奥へ引っ越してひっそり暮らした方がいいのでは?などと、二人は話した。しかし実際のところ、どうしていいか分からなかった。そこでおサエが、
「ねえ。和尚さんに相談せん?和尚さんなら解決してくれるんとちゃうかなあ?」
と、言ったので、
「あ、ああ!ほだよ!お、おサエちゃん頭ええ!さっそくお寺に行こ!」
と、吾作はひと筋の光が見えた気がしたので、二人でお寺に向かう事になった。早速身支度して家の外に吾作が出た。するとお寺へ行く道の方からいつくもの光がゆらゆらと揺れながらこっちに向かってくるのが見えた。
「ああ?何か分からんがきれいだなあ。」
と、また夜の景色がきれいに見えてるのだと吾作は思った。だが、よく見るとそれは、村人たちが持っているたいまつで、みんながこの家に集まって来ている事にすぐに気がついた。
吾作はすぐに家に戻り、
「お、おサエちゃん!みんながこっち来る!どうしよう!」
と、おサエに言った。二人はどうしようかと思ったが、みんなが来るのを待った。