吸血鬼 吾作 十の三

吸血鬼

おサエは、昼の通夜の芝居に罪悪感がわいてきていたのだが、夜になり、吾作が目を覚まし、和尚さん、庄屋さん、吾作の家に集まり、今後の話をする頃には、罪悪感どころではなかった!と、思い直すのであった。庄屋さんは使用人から吾作の通夜を監視していたヨソの人間を確認した。と、話してきた。

 和尚さんは、

「このままやり過ごすのがええ。」

と、言い、庄屋さんは、

「隣村の庄屋と代官は絶対に許さん!」

と、言って聞かない。しかし庄屋さんには考えがあり、

「和尚の言うように、一度このままやり過ごた方がええ。ほんで墓まで吾作が入るまでを確認もするだらあ。

 わしが考えとるのはその後だわ。吾作は今やいろんな事が出来るに、それを使って奴らに祟りみたいな事を起こさせて、奴らを怖がらせるんだわ。ほしたら奴ら、まあウチの村にちょっかいを出さんくなると思うだよ。」

と、言った。その案に吾作とおサエは、

「面白い!」

と、なったが、和尚さんだけは、

「ほんなバチ当たりな・・・っ。」

と、あまり乗り気ではなかった。でも和尚さん以外はみな乗り気だったので、和尚さんも仕方なく、その案に同意した。

 さて、いざ祟りに見せかけるには?と、なったので庄屋さんが、

「吾作。おまえ、いろんな事が出来るけど、何か人を驚かせるようなもん〜・・何かあーへんか?」

と、吾作に聞いた。吾作は、

「う〜ん・・・ほだねえ。

動物を操る事と〜・・・

コウモリとかオオカミに変化する事と〜・・・

空を飛ぶ事〜・・・?

 後・・、何かあったっけ?あ、ほだ。

煙になって人の入れんトコとか入れる!

 ほんなもんかなあ〜・・・。ほんだけです!」

と、一生懸命頭を絞って答えた。そこにおサエが、

「え?動物を操れるの?」

と、聞いてきたので、

「ほだよ。昨日見せたじゃん。」

と、吾作は答えると、

「あ、え?あのイノシシ?そういう事だったの?全然分かっとらんかったわ!まあちょい説明して〜!」

と、おサエは軽く切れた。吾作は、

「あ、あ、だから昨日はいっぱいのネズミに隣村から家まで運んでもらったんだわ。ごめん。言ってなかった?」

と、慌てながら昨日の説明をした。その様子を見ていた庄屋さんが、

「ん〜。さっき煙って言ったけど、それはどんな感じにもなれるんか?」

と、煙について聞いてきた。吾作は、

「あ、今からやりますか?」

と、言うと、吾作は一気に煙になって部屋の中を移動したり、手だけを煙にしたりと、みんなにそれを見せた。それを見たみんなはとても驚いた。おサエも、吾作が煙になる事は聞いてはいたが実際に見るのは初めてだったので、こんな事になるんだ!と、それは驚いた。そして庄屋さんは、

「これは使える!」

と、喜んだ。そこで大量のネズミを屋敷に連れて行き、吾作は煙となって隣村の庄屋さんや、代官を驚かして、二度と村の事に口出しさせないように釘を刺す方法にした。

 しかし問題は、吾作が幽霊の真似事が出来るかどうかで、実際にみんなの目の前で練習をしてみると、煙になるまではいいが、

「・・・な、何言ったらいいんです?」

と、吾作は聞くハメに。

「恨めしや〜って言え!」

と、庄屋さんに怒られてしまうと吾作は、

「わ、わしこんなんやった事あ〜へんもんで、何言っていいか分かんないんです〜っっ。」

と、本気で困ってしまった。そこで庄屋さんが、

「分かった!何言ったらいいか、わしが紙に書いといてやる!ほいでいいだらあ!」

と、呆れながら吾作に言った。このやりとりを見て、おサエと和尚さんは、

「大丈夫?」

と、不安になった。

吸血鬼 吾作 十一の一 へつづく

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