吸血鬼 吾作
こんにちは、ヒッチです。
何だか急にむかしばなし的なモノを思いついて、
書かずにはいられなかったので、小出しにしていきますね。
たぶん、短編小説ぐらいに長くなりますので、
ホントに興味のある人だけでぜ~んぜんかまいません。
つーことでよかったら読んでみてやってくださいませ。
あ、タイトルはホラーですけど・・・違いますかねえ。
たぶんむかしばなし 吸血鬼 吾作
一の一
むかしむかし、海に近い農村の村に吾作という若者が嫁っ子のおサエとニ人で暮らしていた。
吾作は背も小さく、つぶらな目をしていてとても童顔で少年のようないでたちだったが、性格も内気だけどバカ正直で純粋で素朴でとても真面目な性格だったので、ホントに少年のような男だった。
嫁っ子のおサエも背が小さく少女のようないでたちで、性格もやっぱり内気で素朴そのものだったので、二人は小さい頃から仲がよく、村人たちからは将来いっしょになるだろう。と、言われていた。なのでホントに結婚した時にはやっぱりな。と、言われながらもこの上ない祝福をうけた。
しかしおサエが吾作の家に嫁いですぐに吾作の両親が死んでしまったので、この家には働き手が少なくなり、いっきに貧しくなった。しかしそれでも二人は全く気にせずせっせと真面目に働いていた。
ふだんは畑仕事などしているが、仕事が一段落すると近くの海に行って海を眺めたり潮風を浴びるのがニ人とも大好きだったので、しょっちゅう海に出かけていた。
その日も雲一つない快晴で、ちょっと風が強いかな?と思うけどそんなに気温も高くなく、絶好のお出かけびよりだったので、吾作と嫁っ子は畑仕事もそこそこに海へ出かけて行った。いつものようにウキウキしながら歩いていくと、いつもと海の様子が違う事に気づいた。
ふだんは物静かな海だったが、その日は波が高かった。そして何やらいろんな物が波打ち際にうちあげられていた。大きな木の柱もあれば、小さいがとてもきれいな柄の布きれ、木箱、ガラスのコップなど、吾作たちが見たことのないような物があった。そして沖の方に大きな船の先端のような物が斜めに立ち上がって見えた。
「こ、こりゃ船が沈んだんだ!た、大変だ!」
と、吾作とおサエは波打ち際まで走っていった。しかし、何をしていいのか分からなかったのでオロオロしていた。
するととても大きな長方形の木箱が流れついていて、それが少しだけ動いているように見えた。ニ人はその大きな木箱に近づくと大量のカニやらヒトデやらウニやらが四方八方に逃げていったので二人はとてもびっくりした。すると木箱の中から小さな声が聴こえたような気がした。
「どこか、日陰のところまで運んでほしい…」
最初は気のせいかと思った。しかし、
「たのむ…日陰に…」
と、やはり聴こえたのでニ人は、
「きこえた?」
「きこえた!」
と、確認をしあうと、その木箱をかなり重かったが漁師さんの使っている小屋まで一生懸命ずりずりと引きづりながら運んだ。
小屋と言っても漁師さんが漁で使う網などの道具を置いておくための小屋なので、作りも適当で入り口がないどころかその面の壁は最初からない作りで広さも畳三畳ほどしかなかった。それでも奥行きはそれなりにあったのでなんとかニ人はその大きな木箱を小屋の奥まで押し込んだ。
木箱を押し込み、ほっとニ人は一息ついた。すると木箱の中から、
「ここは日陰なのか?」
と、小さく声が聴こえたような気がしたので、
「そだ。日陰についた。ここなら日は当たらねえ。」
と、吾作は答えた。すると、
「そうか。ありがとう。」
と、声が聴こえたかと思ったら、その木箱の蓋が少し開いて、青白い肌に異様にギョロっとした両目が二人を見た。