【怪奇小説】『吸血鬼』(1819)のザックリ解説♪世界初の吸血鬼小説ってよく言われてます♪

こんにちは、ヒッチです。

今回は1819年の怪奇小説『吸血鬼』についてザックリ書いていこうと思います。

今回もなるべくネタバレなしの予定です♪

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吸血鬼 The Vampyre

吸血鬼ラスヴァン 英米古典吸血鬼小説傑作集 東京創元社

2025年現在、『吸血鬼』を読むのに一番最適な本は多分これ♪

ポリドリ『吸血鬼』の元になったバイロン卿『吸血鬼ダ―ヴェル-断章』やその後の吸血鬼作品に影響を与えたと言われる大長編『吸血鬼ヴァーニー』の抄訳(部分的なトコだけってヤツです)など、『吸血鬼ドラキュラ』が発表されるほぼ以前の作品が10編収録されています♪

つー事で販売元の東京創元社のサイトのページにもリンクはっておきますね〜♪

それとこの本のバイロン卿『吸血鬼ダ―ヴェル-断章』ポリドリ『吸血鬼』の感想を以前書いていますので、よければどうぞ♪

序盤のあらすじ

若き英国紳士オーブリーは、謎めいた貴族ルスヴン卿とヨーロッパ旅行へ出発する。
彼の冷酷な振る舞いに疑念を抱いたオーブリーはスルヴン卿から離れ単身ギリシャへ向かい、娘イアンテと恋に落ちる。
だが村には吸血鬼伝説が囁かれ、イアンテの身に不穏な影が忍び寄る──。

※このあらすじはWindowsのコパイロットさんにほぼ、書いてもらいました♪♪

登場人物

  • ルスブン卿/新訳:ラスヴァン卿
    ……謎の貴族。最悪です♪
  • オーブリー
    ……お金持ちの若い紳士。純粋です♪
  • イアンテ/新訳:アイアンシー
    ……ギリシャで知り合った女の子。一目惚れです♪
  • オーブリーの妹
    ……妹です♪

こんな感じです♪『吸血鬼ラスヴァン』での名前を新訳と書きました。この小説の以前の訳ではこういう名前です(たぶん)。

この違いは翻訳者のセンス?なんでしょうかね?ちなみに英語では“Lord Ruthven”と書くんですが、ウィキペディアで今作の英語版を翻訳するとルースヴェン卿と訳されます♪

この違いと本当の発音って何?Windowsコパイロットさんに聞いてみたところ、【スコットランドの地名や貴族に実在する名前で、スコットランドでは「ルースヴェン」や「ラスヴェン」と読むこともありますが、英語圏では「リヴン」と発音されるのが一般的】だそうです♪

ちなみにもう1人、ギリシャ娘のイアンテ、これはギリシャ語に寄せた訳で、新訳のアイアインシー英語に寄せた訳だそう。つづりは“Ianthe”で英語の発音に近いのは“イーアンシー”コパイロットさんは申しておりました♪

発音とか日本語訳って名前だけでも大変ですねっっ。

概要

1819年にジョン・ポリドリさんにより書かれた短編小説で、この作品が今の吸血鬼の原点的な言われ方をよくされています。

というのもこの作品以前にも吸血鬼を扱った小説はあったそうなんですが、今作以前の吸血鬼はあくまで民間伝承の怪物的存在だったそうで、今作で初めて貴族として上流階級を餌食とする悪魔的なアンチヒーローとも言える存在になったそうですよ♪

そもそも事の発端は1816年、スイスのレバン湖に建っているバイロン卿の別荘に集まったメアリー・シェリー、義理の妹クレア・クレアモント、メアリーの旦那のパーシー・シェリーバイロン卿とその主治医だったジョン・ウィリアム・ポリドリが集まったはいいけど、

ずっと雨続きで外に出れない日が続いちゃったからバイロン卿がドイツの怪奇譚『ファンタスマゴリアナ』を読んだ後、

「俺たちもそれぞれ怪談作ったら楽しくね?」

的な感じ(かどうかは知らんけど)提案したという“ディオダティ荘の怪奇談義”という有名な集まりがありまして、この時メアリー・シェリーが書き始めた作品が『フランケンシュタイン』になっていきます。

ちなみにこの“ディオダティ荘の怪奇談義”の様子(だけじゃないけど♪)を『メアリーの総て』という映画で描いておりまして、どこまで史実かは分かりませんがなかなか面白いのでおすすめ♪

ちなみに1986年の映画『ゴシック』もそうなんですけど、現在DVDの販売が終了してお値段が高騰している上に配信も宅配レンタルにもない状態なので、現在観るのはちょっと難しいのでした(泣)。

この時にバイロン卿吸血鬼の小説の序章を書くのですが、そこから上手く展開できなかったのかこの作品はここでストップ、それを読んだ(聴かされた)ポリドリ日頃のバイロン卿への不満も踏まえつつアレンジして書いた作品が今作だとよく言われています。

ただこの『吸血鬼』、1819年4月1日に“New Monthly Magazine”という雑誌でバイロン卿作としてポリドリの知らないところで発表されて、これにはポリドリもバイロン卿も出版社に訂正を何回も申し込んだそうですが、なぜか訂正されず同年には『吸血鬼。84ページの物語』 (The Vampyre; A Tale in 84 pages) というタイトルで書籍化もされたそうですが、やっぱりこの時もバイロン作となっていたそうです(その後無事に訂正♪)。

ただこの訂正されずに「バイロン卿の新作」として世に出回った事で、この作品は一大ブームになってったみたいです。

1820年には『Lord Ruthwen ou les Vampires』という続編がこれまた許可なしシプリアン・ベラールという方が書いたりしましたが、発表時にはフランスの作家シャルル・ノディエ作となってたり(当時ってメチャクチャっっ)、そんなノディエさん『Le Vampire』という『吸血鬼』をメロドラマテイストにした舞台劇を書いてそれが演劇界で大当たりしたらしいです(笑)♪♪さらにそこからオペラになったりもしてるみたい♪♪

そんな大吸血鬼ブームが到来したのに乗じてか、その後テオフィル・ゴーティエ『死霊の恋』A.K.トルストイ『ヴルダラクの家族』など、いろんな作家さんが吸血鬼の小説を発表しており、そういった下地ができた頃に『吸血鬼ヴァーニー』『吸血鬼カーミラ』そして『吸血鬼ドラキュラ』が世に出たと考えられているそうです。

作者/ジョン・ポリドリ

本名:ジョン・ウィリアム・ポリドリ、1795年イギリス出身。お父さんはイタリアから亡命してきた政治学者さんで、お母さんは家庭教師だったそうです。エディンバラ大学で夢遊病に関する論文を書いて19歳で医学博士の学位を取得したそうな♪

1816年にバイロン卿の主治医として同行するようになり、ヨーロッパ旅行に同行したり、“ディオダティ荘の怪奇談義”ってヤツで『吸血鬼』を書くことになったりします♪

その後バイロン卿の主治医を辞めた(解雇?)ポリドリさんはイギリスに戻ったそうですが、ここで『吸血鬼』無断掲載が起こり、けっこう精神をやられたっぽいですねっっ。

1821年には匿名で『天使の堕落(The Fall of the Angels)』という長編を出版したそうですが、その年の8がつ24日、うつ病ギャンブルによる借金がかさむ中、亡くなったそうです。家族は青酸カリによる自殺を疑ったそうですが、検死官は自然死としたそう。う~む……

そしてポリドリさんの著作ですが、今作以外ちょっと探したんですけど日本語訳されたものは見つかりませんでしたっっ。ざっとでしか調べていないので、ひょ~っとしたらどっかにあるかもですけどっっ。

他の翻訳本

【幽霊島】 平井呈一怪談翻訳集成 創元推理文庫

『吸血鬼ドラキュラ』『吸血鬼カーミラ』翻訳をされている平井呈一さんの怪奇小説の翻訳した短編13編を集めた本。

私は未読なので語れませんが、H・P・ラヴクラフトオスカー・ワイルドと聞いた事のある作家さんの短編が入ってるそうです♪

【吸血鬼 書物の王国12】 寺山修司 他著 国書刊行会

こちらは国内外の吸血鬼の短編を26編収録された本。販売が1998年となっておりまして、新刊では手に入りづらいかも。

しかしこの本、ゲーテ『コリントの許婚』/バイロン卿『断章』/ポリドリ『吸血鬼 ある物語』/ブラム・ストーカー『ドラキュラの客』/リチャード・マシスン『血の末裔』/テオフィル・ゴーチェ『クラリモンド』など気になる作品が当時の新訳でまとまっているらしいっっ。ちょっと読んでみたいですっっ。

【ドラキュラ ドラキュラ: 吸血鬼小説集】 種村季弘編 河出文庫 

初版は1973年に薔薇十字社という出版社から販売が開始されて出版社をまたいで版権の関係で短編1編とエッセイ3つをはぶいちゃったけど吸血鬼の短編11編が収録の今でも販売され続けている本。

そんな訳で全体的に翻訳が当然古くてですねえ、ポリドリの『吸血鬼』に至っては「ゐ」なんてひらがなが出るくらい古いので、ホントに読書が好きな方古典が好きな方にはにはおすすめできますが、私みたいなあんまり読書が得意ではない人間にはチンプンカンプンな事になりえますのでご注意を(笑)♪

ただ、私はポリドリの『吸血鬼』以外を読んでいませんので(心が折れたっっ)、ほかの作品はけっこう面白いかも♪ちなみにその時のグチだらけの記事はこちら♪♪

というかジャン・ミストレル『吸血鬼』コナン・ドイル『サセックスの吸血鬼』ジュール・ヴェルヌ『カルパチアの城』など何気に今ラインナップを見ると読むべきな気が……

ちなみにこの『吸血鬼』の翻訳、青空文庫で無料で現在読めました(笑)♪
リンクはっときます♪挑戦したい方はぜひ♪

青空文庫にある『吸血鬼』/ポリドリ作/佐藤春夫訳はこちら♪♪

個人的な感想

今回久しぶりに『吸血鬼ラスヴァン』を読み返しました♪

すっかり忘れていたんですけど、この作品、物語に入る前に“序文”っていうのがあって、そこで「吸血鬼ってこんなでね♪」っていうのをお堅い文章で書いてあったんですよね〜♪

お堅いと書きましたが、何気にバイロン卿の詩を引用していたり、この“序文”だけでも読み応えがありました♪

そして物語に入るとやっぱり一気に引き込まれてどんどん読み進めちゃいましたねえ。昔の小説なのでセリフがだいぶ少ないんですけど、翻訳やいいおかげかめっちゃ楽しく読めちゃいます♪

そして今作の吸血鬼、ラスヴァン卿ですけど、読み直すとこの人、私が過去に観たり読んだりした吸血鬼の中でもトップクラスに残酷で冷酷でヒデ〜男ですね(笑)!!こんなにひどかったっけ?って思うくらいヒドい。

何がヒドいってただ殺すんじゃなくて精神を揺さぶって人をおとしめてっちゃうのをめっちゃ楽しんでるのがヒドい(笑)!!

ポリドリさんがバイロン卿をモデルにしたっぽい事を読みましたけど、これを読むバイロン卿ってよっぽどヒドい人なのかな?ヒドい事されたのかな?っていろいろ考えてしまいます(笑)♪

お話も短編にしては長編でよくない?って思うくらいいろんな事が起こる作品なので、まるでジェットコースターのような短時間にいろんな高低差が味わえてそれもすごいと思います。

とにかく読み終えた後、

「あ、終わり?マジ?ヒド過ぎない?」

と大抵の人は思うんじゃないですかねえ♪でも決して悪い意味ではなく、本当に読み応えがありましたし、吸血鬼ってこれくらい怖い怪物なんだな!と痛感しました♪

読書好きの方にはもちろんおすすめしますが、吸血鬼好きな方や吸血鬼の事を調べ始めた人とかにはホントに読んでもらいたい1編です♪

という訳で今回はポリドリの『吸血鬼』についてザックリ書いてみました〜♪♪

んじゃまた〜♪♪

※参考文献、ウィキペディア

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