吸血鬼 吾作
吾作は次の日もずっと寝ていた。意識はあるのだが、とにかく体に力が入らず、痛みはなかったが動くことが出来なかった。そんな訳で嫁っ子のおサエ一人で畑仕事に行ってもらった。悪いなあ…と思いつつ、本当に体が動かなかった。
横になっている間、今回の件を考えていた。
あの人はなんだったんだろう?やはり化け物だったのかな?お日様の日を浴びたら燃えてしまったけど、わしがあの人を殺してしまったのかな。ああ、だとしたらわしは罪人だ。なんて事だ。でもそもそもあれは全部、夢だったって事はないかなあ?それだといいんだけど。でも今わし寝てるから、やっぱ本当の事だったんだよなあ。
などと、ぐるぐる答えの出ない問答をひたすらやっていた。
おサエが畑仕事の合間に家に帰ってきてお粥を作った。しかし吾作は全く食べれなかった。そして吾作自身も意味が分からなかったが、昼の明るさがとてもまぶしすぎて目を開けていられなくなっていた。しかし吾作の体はそれどころではなかった。
目は開けられないし、体も動かせない。おかしいなあ。なんであのおっきい男に咬まれて血を吸われただけでこんなに動けないものか?吾作は思った。そして部屋の中ならまぶしくないかもと思い、目をそっと開け、天井を仰いだ。
しかし何だか体が動かないにもほどがないか?あれ?ホントに動かんぞ?今、気が付いたけど、体全体の感覚がなくなってきとるぞ。指の先まで全く感覚がなくて動かせーへん!何だ?今度は目を開けたまま閉じなくなっちゃったぞ!まぶた一つ動かせんてなんて事ある?わし、これホントに死んどるんじゃないのか?でも前聞いた話だとよく死んだら体から魂ってのが離れて自分を部屋の上から見るとかだったけど…目線が動かんのは、わしは生きてるという事だよな?ほんじゃこれ何だ?体全部が痺れてるんか?ほんな事あるのか?声を出したくても口も動かんし…おサエちゃん早よ帰ってきてくれ〜!
と、吾作は全く動かせなくなったこの状態に恐怖していたが、だんだんと視界が真っ白になっていき、吾作はそのまま気を失ってしまった。