吸血鬼 吾作 二の一

吸血鬼 吾作

 吾作が目を覚ますとそこは自分の家で、自分の布団で仰向けになって寝ていた。

(あれ?なんでわしここで寝とる?)

と、吾作は思った。まだ起き上がる事は出来なかったが、目の前で涙ぐんでいるおサエの顔がまずは目に入った。そして、家の中に近所の村人たちがわんさかいる事に気づいた。

「おお!吾作が目を覚ましたで!」

と、村人が家の外へ声をかけた。そうするとさらに多くの村人たちが家に押し寄せてきた。まだ事態を把握していない吾作だったが、村人が親切に話してくれた。

「おサエさんがな、ウチの旦那さんが倒れとるで助けてくれ~!って、わんわん泣きながら走ってきたんだわ。」

「も~びっくりしたわ~!小屋で倒れとるおまえさん、死んどるようにしか見えんかったで。」

その話を聞いて吾作はようやく自分の身に起こったことを思い出し、あのオロロック伯爵のことも思い出して身震いした。

「あの、あの、」

と、吾作が伯爵のことを聞こうとした時、

「あ、沈没船だら?今、お役人たちがいっぱい来て浜は大騒ぎになっとるで。それと何かおサエさんが言ってた化け物。そんなんおらんかったで。安心しりん。」

と、村人が教えてくれた。おサエも、

「あの恐いバケモンはもう死んだんだわ。よかった。もうどうなることかと~・・・」

と、言うとまた泣き始めてしまった。その話を聞いてしっかり安心した吾作は、またパタリと寝てしまった。

吸血鬼 吾作 二の二へつづく

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